任意売却をするときの引越し代について

任意売却の引越し代

『(競売と違い)任意売却なら引越し代がもらえる』
という内容を書いているウェブサイトがたくさんあります。

一昔前はたしかにそういう側面もありましたが、最近は、任意売却をしたからといって必ずしも引越し代が出るわけではありません。
引越し代が出ることもありますが、全員に出るというわけではないのが実情です。
引越し代は、任意売却をして新しい生活をスタートさせるためにとても重要な部分なので、任意売却をするにあたってどのように準備していく必要があるのか、名古屋住宅ローン相談室ではご相談者様へ最初にご説明します。

このページでは、任意売却をしてどんな場合に引越し代がもらえることがあるのか、引越し代は任意売却のどのタイミングでどの範囲までもらえるのか、一般的な概要をまとめています。
具体的な内容は案件ごとに異なるので、直接お問い合わせください。

任意売却をすれば引越し代が必ずもらえるような書き方をしているウェブサイトがありますが、必ずしもそうとは限らないため、正確な内容は専門家に直接確かめてください。

任意売却で引越し代が出ることがある仕組みとは

任意売却の引越し代が出る仕組み

任意売却について紹介するウェブサイトでは、よく、こんな風に書いてあります。
『競売では引越し代が出ない』
『任意売却なら引越し代がもらえる』

ここまで言い切ってしまうと誤解を招いてしまいますが、たしかに、競売では引越し代が出なくても任意売却であれば引越し代が出る可能性があります。

任意売却では誰が引越し代を負担するのか

任意売却で引越し代を負担するのは、ほとんどの場合、債権者です。買主が引越し代を負担してくれる場合もあります。

任意売却で債権者が引越し代を負担してくれる仕組み

任意売却の引越し代を債権者が出す仕組み

任意売却で債権者が引越し代を負担してくれる仕組みは、図の通りです。
任意売却で引越し代が出るケースの大半は、債権者が自分の取り分から引越し代を捻出しています。
競売の落札価格よりも、引越し代を負担したとしても任意売却をした方が回収できる金額が大きいため、任意売却であれば引越し代を出すことができるという理屈です。
ただ、後ほど説明しますが、今は任意売却だからといって必ずしも引越し代が出るわけではなく、引越し費用の計算についても昔に比べてシビアになっています。

任意売却で買主が引越し代を負担してくれる仕組み

任意売却の引越し代を買主が出す仕組み

稀なケースですが、任意売却物件を購入した買主が売主の引越し代を負担してくれる場合もあります。
債権者が引越し代を払わなくても、仲介会社が、別途、買主に引越し費用の負担をお願いしているケースです。

買主としてはもちろん、「なんで引越し費用まで負担しなくちゃいけないの?」と思うため、任意売却のハードルは高くなります。
さらに、買主が住宅ローンを組んで任意売却物件を購入しようとした場合、売主の引越し費用までは住宅ローンに組み込めない場合も多いため、その点でも任意売却のハードルは上がってしまいます。

それでも稀に、「この値段でこの物件が買えるなら数十万円くらいの引越し代は出してもいい」という買主さんがいることもあります。

どういう状況なら任意売却で引越し代が出ることがあるのか

任意売却の引越し代が出る状況

任意売却で引越し代が出るのは、ほとんどのケースで、債権者が引越し代を捻出してくれているからだとご説明しました。

ただ、任意売却であればいつでも債権者から引越し代を用意してもらえるわけではありません。
引越し代が出る基準はないため、はっきりと、『こういう状況では引越し代が出る』とは断言できないのですが、債権者が引越し代を捻出する時に検討することをざっくりと取り上げることはできます。
債権者は次のような事項を総合的に勘案して、引越し代を捻出するかどうかを判断します。


【債権者が引越し代の捻出を検討するときの材料(例)】
・ 任意売却でどれだけお金が回収できるのか
・ 任意売却で回収できないお金がどれだけあるのか
・ 住宅ローンを開始して返済期間がどれだけあるのか
・任意売却をするにあたっての売主の対応 など

債権者は売却価格から売主の引越し代を捻出するわけですから、不動産をいくらで任意売却でき、どれだけお金が回収できて回収できないお金がいくらになるのかによっても、引越し代を出せるかどうかは変わってきます。
また、住宅ローンを開始して1年後なのか、10年後なのか、15年後なのか…。当然、住宅ローンの返済期間が長い方が債権者へ多くの利益をもたらしているわけですから、住宅ローンを返済してきた期間によっても状況は変わります。
それから、任意売却を進める際に書類のやり取りや連絡がスムーズにできたのか、売主が任意売却にどれだけ協力的に動いたかも、検討材料の1つになります。
その他にも個別でいろいろな勘案事項がありますが、全てを総合して、引越し代が出せるのか、引越し代としてどれだけの金額が認められるのかが決まってくるというわけです。

任意売却で出る引越し代の範囲

引越し代、と一括りにするといろいろなものが含まれます。
賃貸物件を借りる費用、引越し業者に支払う費用、不用品の処分にも費用が発生する場合もあるでしょう。
ただ、任意売却で認められる引越し代は、すべてが含まれるわけではありません。

任意売却で引越し代と認められる範囲について

繰り返しになりますが、債権者は売却代金から自身が受け取る分を削って引越し費用を捻出します。例えば不用品の処分は、基本的には引越し代として認められません。通常のゴミ出しや粗大ゴミでの処分でなんとかならないのか、という理屈です。たしかに、大きなタンスなどを処分するにはお金がかかるでしょうが、ほとんどの場合、そうした費用は引越し代として出してもらうことは難しいと考えておくべきです。

その他、賃貸物件に入居する際の敷金や保険代、最近では鍵交換代や消毒代なども、出ない可能性があります。
債権者によって『引越し代』の定義が変わります。
引越しをする際にかかった費用が全部引越し代に含まれるわけではないので、何が引越し代として認められるのかは事前に仲介会社等とよく確認してください。

任意売却で依頼する引越し業者さんについての注意点

引越し業者さんへの支払いについても、メジャーな引越し業者さんは問題あないのですが、売主さんの知り合いの運送会社さんなどに頼むと、債権者から引越し代として認められることが難しくなる可能性があります。
お知り合いにお願いしてお金を払う、という状況で、債権者が引越し代として認められるかどうかは、状況次第にもなりますが、注意が必要だとご認識ください。

任意売却で出る引越し代の金額

最後に引越し代の金額についてですが、これは、必要最低限の実費が認められるケースがほとんどであることも事前に把握しておいてください。
例えば、引越し代を30万円までの実費を認めます、とされている場合。
これは30万円までの実費が認められるということなので、仮に、認められる範囲の項目で20万円掛かったとしたら、引越し代として出るのは20万円です。
この点もご注意ください。

任意売却では売却することに関心が集中しがちです。それに、自宅を手放すということで心身ともに力が入らない、という状況になってしまうご相談者様もいらっしゃいます。
それでも、任意売却を成功させるためには売主が引越しをして自宅を引き渡すことが必ず必要になりますので、そのために必要な費用の確保や準備は、任意売却を決めた時点で始められることが得策です。
任意売却の引越し準備については、下記ページもご参照ください。
>>任意売却の準備(補足)

任意売却で引越し代がもらえるタイミング

任意売却の引越し代が出るタイミング

任意売却で引越し代がもらえるタイミングは、誤解されている方も多い、大切なテーマです。
繰り返しになりますが、任意売却で出る引越し代はほとんどの場合で債権者が売却代金から捻出してくれるものです。
債権者は、自分の身銭を切って売主に引越し代を出すのではなく、任意売却して回収できる代金から差し引いて引越し代金を出してくれます。
そのため、どのタイミングで引越し代が出るかというと、売主が引越しをして買主が購入した時になります。

順番は、次のようなイメージです。
任意売却を決めて販売活動を始める。

買主が決まる。

買主と売買契約を結ぶ。
↓売主が引越しをして建物の中が空になる。

買主に鍵を渡す、この時に代金がもらえ返済ができる、この返済額の一部が引越し代として捻出される。

引越しが先で、債権者から引越し代金をもらうのは後ということになります。
つまり、売主が引越しをする時には、まずは手元のお金を引越し代金に充てなくてはいけないということです。

任意売却の引越し代について注意するべき誤解

『任意売却では引越し代が出るから引越し代のことは心配しなくてもいい』
と誤解してしまうと、土壇場になって引越し代の確保に慌てることになってしまいます。

債権者から引越し代が認めてもらえるかどうかは100%の保証はなく、もしも認めてもらえたとしても、引越しにかかる費用全てが引越し代として出るわけではありません。
また、ここが非常に重要なのですが、引越し代が出るのは売主が引越しをして建物が空になり、買主に鍵を渡して代金が支払われた後です。

任意売却をするためには引越しをしなければならず、引越しのタイミングではまずご自身で引越し代を用意しなくてはいけません。 名古屋住宅ローン相談室では、住宅ローンを滞納した時から、もしくは、ご相談をいただいたできるだけ早いタイミングから、引越し代のために貯金していかれるよう推奨しています。

まとめ

近年、インターネット上では、『任意売却をすれば引越し代が出る』というような表現が多くみられますが、少し誤解を招く表現になっています。

任意売却を成功させるためには、引越しが必要で、引っ越す時にはどのような場合でもまずは売主自身が引越し代を用意する必要があります。
ですから、住宅ローンの滞納が始まったとき、もしくは、任意売却を決めた瞬間から、引越し代についてを気にかけて行動するようにしてください。

このページでは誤解がないように下記のことを確認しています。

  • 任意売却をしても必ずしも引越し代が出るわけではない。
  • 引っ越すための費用が全額引越し代として認められるわけではない。
  • 引越し代が出たとしても、売主が引越しをした後になる。

■ 引越し代をできるだけ減らすために、まずは不用品はご自身で少しずつ処分して不用品処分のための費用を節約する。
■ 引越し先にあたりをつけて初期費用がどれくらいかかるのかを知ったり、引越し業者にいくらくらい支払う必要があるのか一括査定などで見積もりを取り引越し代にいくらかかりそうかおおよその把握をする。
■ そして、引越しがうまくできるよう引越し代の準備(貯金)をする。
任意売却で引越しをする際には、こうした行動がとても大切です。

任意売却について、また、任意売却以外の住宅ローン返済の問題解決について、不安や心配がある場合には名古屋住宅ローン相談室へどのようなことでもお気軽にご相談ください。